コロナ禍の3年間でSHOP STOPが展開している公開空地の商業利用の数は2019年に比べ7倍に増加しました。
公開空地とは、オープンスペースの一種です。1971(昭和46)年に創設された総合設計制度に基づいて設置され、開発プロジェクトの対象となる敷地に設けられた空地のうち、一般に解放された自由に通行できる空間のことをいい、原則として商業利用はできません。
このコロナ禍で、SHOP STOPが展開している東京都の公開空地における商業利用が増加した背景には大きく分けて2つの理由があります。
1つ目は、東京都では平成15年に「東京のしゃれた街並みづくり推進条例」を制定しており、他のエリアに先駆けて公開空地の商業利用の規制緩和が行われており、活用事例の蓄積があったこと。
2つ目は、新型コロナウイルス感染症の流行でオープンエアな空間活用が注目され、「キッチンカーは3密を避けながらできたての料理を楽しめる」と、Beforeコロナに比べて公開空地の活用が進んだこと。
こういった理由が、東京都の公開空地を商業利用する事例増加を後押ししたと推測されます。
また、東京都以外でも徐々に公開空地における商業利用は加速しています。東京都に続いて川崎市、大阪市でも規制緩和されており、名古屋市でも今年実証実験が開始されました。
東京都の公開空地の活用事例を鑑みると、県や市区町村などが独自で公開空地利活用の規制緩和による商業利用を進めることで、人が集まりにぎわいが生まれる場所になるため、広場を活用するエリアマネジメントにとっても良い取り組みとなる可能性は充分にあります。
メロウは東京都の「まちづくり団体」としても、定常的にキッチンカー等の移動販売による公開空地の活用に取り組んできた実績をもとに、その他のエリアでも広場活用の取り組みを行っていきます。また、その地域の独自性を生かした「まちの魅力を高める活動」を加速させてまいります。
都市デザインの専門家からのコメント
日本大学理工学部建築学科 助教 泉山塁威さま
公共空間の活用は、ここ20年で特例的に「規制緩和されてきている」事例が増えてきました。
一方で、エリアマネジメントの観点からすると、公開空地のみならず歩道状空地の活用など公開空地の制度の改善余地はありますが、点ではなく面で、エリア全体としての構想を考える必要があります。また、公共空間の活用においては、行政と民間企業の連携が必要ですが、まだまだ課題が山積みです。
東京都では他の地域に先駆け、平成15年より「しゃれ街条例」を施行し、総合設計制度に基づいた容積ボーナスがある1h以上の公開空地を活用する「規制緩和」を開始しました。最近では、名古屋市や川崎市がこの規制緩和の事例を元に、総合設計制度で設けられた公開空地の活用を開始していると聞いています。
全体からすると、公共空間の活用は特例的に規制緩和されてきていますが、今後はさらに行政と民間企業が共に協力することで、活用幅が広がってくると想定されます。名古屋市ではエリアマネジメントの団体が植栽やベンチなどを設置してスペース活用をするなど、人の流れを作っています。
公開空地は民有地なので、行政だけが保有する公共空間とは異なる性質もありますが、局所的にではなく「街全体として、空間のあり方をいかに設定していくか」が今後の課題です。
【泉山塁威さまについて】
都市戦術家|プレイスメイカー日本大学理工学部建築学科 助教|一般社団法人ソトノバ 共同代表理事|一般社団法人エリアマネジメント・ラボ共同代表理事|PlacemakingX日本リーダー博士(工学)/認定准都市プランナー
主な著書に、「タクティカル・アーバニズム: 小さなアクションから都市を大きく変える」(編著、学芸出版社、2021年)、「エリアマネジメント・ケースメソッド: 官民連携による地域経営の教科書」(編著、学芸出版社、2021年)、「楽しい公共空間をつくるレシピ プロジェクトを成功に導く66の手法」(編著、ユウブックス、2020年)など。
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